「地面師」梶山季之著
昭和の流行作家の作品を編んだ短編集。
経済雑誌記者の深見は、S製薬の滝沢を街中で見かけ声をかける。憔悴した滝沢の様子から、経営不振に陥ったS製薬が主力銀行に見限られ、資金難に陥っているという噂は事実のようだ。
滝沢の話を聞いた深見の脳裏に、先日、取材で知り合った吉村の顔が浮かぶ。九州の大地主の吉村は、銀行との取引の実績がないため金を借りられず焦慮していた。一方、主力銀行に工場などを押さえられているS製薬は、別の担保があれば他銀行からの融資が期待できる。両者を結び付ければ、双方が現状を打開できるのではないかと、深見は吉村と滝沢を引き合わせるが……。
最近も話題になった地面師をテーマにした表題作など6編を収録。 (光文社 780円+税)