「怪盗ルパン 二つえくぼの女」モーリス・ルブラン著 保篠龍緒訳

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 物語は、ある夫婦が所有するヴォルニック城という古城の塔の上で、有名な歌姫エリザベス・オルエンが歌っている最中に突如倒れるところから始まる。

 来客40人ばかりが見守るなかで倒れたエリザベスは、肩から胸にかけては鮮血がほとばしっており、すでに息絶えていた。しかもエリザベスがしていた首飾りも忽然と消えており、誰ひとり怪しい人影を見た者もいなかった。そして、犯人もわからぬまま12年の歳月が経過したある日、怪盗グラン・ポールを追うジョルジュレ刑事が、グラン・ポールの情婦である金髪のクララを追いかけて、謎の人物ラウールと遭遇したことを発端に、ヴォルニック城の事件がもう一度掘り起こされることになるのだが……。

 1905年から始まり1941年の著者の死によって幕を閉じた怪盗ルパンの物語は、「怪盗紳士ルパン」「奇巌城」など多くの人気作があるが、本作の原書は後期に書かれたもの。ルパンシリーズの訳書を数多く手がけた保篠龍緒独特の講談調の語り口が、河出書房新社のレトロ図書館シリーズに加わる一冊として、時を経て復活した。ファン待望の書。

(河出書房新社 1950円+税)

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