「八甲田山 消された真実」伊藤薫著
1902(明治35)年1月、旧陸軍青森歩兵第5連隊が雪中訓練中に八甲田山で遭難。将兵199人が亡くなり、8人が凍傷で手足を失った。この未曽有の山岳遭難事故は、昭和50年代、新田次郎の小説や、それを原作にした映画のヒットによって広く知られるようになった。
小説や映画では、雪中行軍の指揮を任された山に詳しい神成大尉と、上官・山口少佐の対立による指揮系統の乱れが悲劇を招いたように描かれている。しかし、元自衛官の著者は、最後の生き証人だった小原伍長の証言テープを聞き、事実と小説との違いに驚き、調査を開始。神成大尉の準備不足と指導力の欠如など、事実を明らかにしながら「八甲田山雪中行軍」とは何だったのか、その真相に迫るノンフィクション。
(山と溪谷社 1100円)