「マイクロスパイ・アンサンブル」伊坂幸太郎著
子どもの頃、下校しても両親がいつも不在だったので、悪い仲間と付き合うようになったエージェント・ハルト。親身になってくれた教師に、エンジンなしで、目的があるのかないのか、優雅に旋回しているグライダーのように生きたいと言ったら、教師は、こう諭した。エンジンを積んでタイムスケジュールどおりに飛んでいるジェット機の方がグライダーより楽かもしれない、と。
その教師は実は諜報員で、ハルトを秘密情報局の仕事に誘い込んだ。「ここで金を稼いで、残りの人生をグライダーで過ごせばいい」。そしてグライダーの歌を口ずさんだ。♪燃料タンク 地図 ナビゲーター ハナからナイよ……。
昔、ずっと幽閉されていた高い高い塔から助け出された女が語る、グライダーが運んだ7つの物語。
(幻冬舎 1430円)