「北関東『移民』アンダーグラウンド」安田峰俊著
「北関東『移民』アンダーグラウンド」安田峰俊著
ベトナムから技能実習生として来日したものの職場からドロップアウトし、アンダーグラウンドな存在となった「ボドイ」と呼ばれる者たち。
もともと中国問題を追いかけていた大宅賞作家である著者は、在日中国人の技能実習生問題や外国人犯罪問題を追及するなかで、中国人が消えベトナム人に入れ替わったことに気づいた。
日本育ちのベトナム人2世の通訳「チーくん」を相棒に、大量の米やビールを手土産にしてボドイの住まいに突入した著者は、北関東に張り巡らされた彼らのネットワークに行きあたる。英語も日本語もつたないボドイは、ベトナム語が通じて闇で仕事を紹介してくれるキーパーソンを頼り、北関東各地の拠点に一緒に住んでいた。
彼らは日本で生き延びようとするなかで、無免許・無保険運転でのひき逃げ死亡事故、ウーバーイーツで働くなかでの高速道路に自転車侵入、豚や鶏などの窃盗疑惑、ベトナム人同士の殺人等々、数々の事件を巻き起こす。
どんな背景が彼らをそうさせるのか。彼らの生の声から、日本の労働人口減少を、ボドイを利用して補おうとする社会の矛盾が浮かび上がってくる。
(文藝春秋 1760円)