「縄文語への道」筒井功著
「縄文語への道」筒井功著
縄文時代に日本列島で使われていた縄文語は、文字資料もないため今の時代に再現することなどできるはずがないと思われがちだ。
しかし、著者は過去に用いられた地名を手掛かりに「アオ」「クシ」「ミ」などの縄文語を割り出した。本書は、地名をそこで暮らしていた人たちが無意識に残した言葉の記録として位置づけながら、その名が縄文時代に名付けられたことを実証しようと試みている。
たとえば「クシ」という語は、竹串などの串と髪をすくための櫛の意味で使われているが、それ以外に「岬」という意味があったと著者はいう。その証拠に日本にはクシの名がついた岬が数多くあること、朝鮮語の古語「コッ」にも、串、櫛、岬の3つの意味が見られることなどを挙げていく。
さらに日本ではクシが島の名についている例があり、これは岬だった地形が海面上昇によって岬の付け根が水没し、先端が島として残った結果と推測。
旧石器時代の地球は今より寒気が厳しく海面が100メートル前後も低かったとされていることを受けて、クシと命名されたのは縄文時代以前といえるのではないかと主張している。
(河出書房新社 2915円)