「装幀余話」菊地信義著
「装幀余話」菊地信義著
山口百恵の「蒼い時」の装幀を依頼されたとき、「なんで俺だったの?」と聞いたら、山口百恵が菊地が装幀した津島佑子の「氷原」を見て、菊地を指定したという。
版元は書名に「青」の字を使おうとしたが、山口が譲らなかった。眠れない夜、ホテルの窓から見える漆黒の空が、だんだんあおみを帯びてくる。そのときの空の色が彼女にとっては「蒼」であり、絶対に譲れないと。
菊地は書名の「蒼い時」を赤の文字にして蒼いグラデーションをかけた。それは「蒼」にこだわる山口への菊地のレスポンスだった。
ほかに、バリー・マクレーの「現代ジャズの奔流」の文字を本の小口と天のギリギリの位置に置いた理由など、装幀者の美意識が伝わってくる一冊。 (作品社 2970円)