「恐怖の正体」春日武彦著
「恐怖の正体」春日武彦著
精神科医の著者によると、患者の症状の根底には、過去に遭遇したさまざまな「恐怖」が影響を及ぼしていることが少なくないという。また世の中には閉所や高所、先端などを恐れる「恐怖症」も存在する。一方で人間は恐怖小説やホラー映画、お化け屋敷など娯楽として恐怖を味わうことが好きな人もいる。こうした恐怖の正体に多視点から迫る科学エッセー。
そもそも恐怖とは何かを定義。その上で神経症の一種である「恐怖症」について論じる。神経症の対象にはあらゆるものが含まれ、学術用語になっているだけで200を超えるという。
ほかにも、恐怖に直面して時間の流れが減速して目の前の出来事が鮮明化する現象や、死がなぜ恐ろしいのかなどを考察しながら、人間心理の根源的な謎に迫る。
(中央公論新社 1012円)