「<一人前>と戦後社会」禹宗杬、沼尻晃伸著
「<一人前>と戦後社会」禹宗杬、沼尻晃伸著
スーパーなどでは、非正規の「パート」が若い正規従業員に基本的な業務を教えるのが日常風景になっている。にもかかわらず、パートの給与は若い正規従業員よりも低い。パートのように働く人が「自分の都合の良い時間に働きたい」と思うのはごく当たり前のことだが、パートは社会的には「半人前」として扱われる。
労働者に限らず、日本の普通の人が一貫して求めてきたものは、「一人前」としての承認にほかならなかった。ひきこもりの増加も、世間が求める「普通≒人並み」との距離感がもたらす生きづらさが原因であることが多い。
本書は、一人前として生きるための、つまり自分の固有の価値を人並みとして認めてもらうための、普通の人々の「承認をめぐる闘争」の歴史を解説したテキスト。
(岩波書店 1166円)