「毎日の暮らしが深くなる季語と俳句」岸本葉子著
「毎日の暮らしが深くなる季語と俳句」岸本葉子著
旧暦4月1日は衣服を夏物に替える衣替えである。〈スクランブル交差点けふ更衣 岸本葉子〉は、渋谷の交差点を夏服の人びとが一斉に歩き出すのを見て、今日は衣替えだったという実感をうたった句。岸本はロシアに行ったとき、初夏なのにノースリーブの人もいれば、毛皮つきコートを着ている人もいるのを見て、日本ではやはり「衣替え」の意識がはたらいていると感じた。
夏至の頃の季語が短夜を意味する「明易(あけやす)」。〈明易や産業道路六車線 岸本葉子〉は、産業道路を夜通し走るトラックの運転手が、日の出の時間が早くなったことを実感するシーンをうたった句。
現代に生きる季語と俳句を紹介するエッセー。
(笠間書院 1650円)