春画鑑賞がもっと楽しくなる本特集
そもそも春画の始まりは平安時代初期。中国の房中術(性愛の手引書)を描いた「偃息図」が伝わったところから始まる。ところが、この偃息図では性器の誇張は見られないため、日本独自の表現方法と考えられる。「日本人は見えっ張りだったのか」と勘繰ってしまうが、そうではない。プロフェッショナルである絵師は、絵の面白さをより追求するとともに、男女和合を「めでたいこと」とする国民性ならではのデフォルメを施したのではないかと著者は考察している。
さらには、度重なる禁制が敷かれても、ここまで春画が発展したのは、権力に屈しない反骨精神を持つ江戸っ子気質があったから。春画を描いてこそ一流の絵師とされる風潮もあり、名だたる浮世絵師がこぞって春画を描いたことからも、その心意気が伝わってくる。
相撲の決まり手である四十八手を体位に置き換えて描いた菱川師宣、医学書や教訓書のパロディー春画を手掛けた月岡雪鼎、質・量ともに最高峰の喜多川歌麿など、名浮世絵師11人の作風や特徴とともに、カラー作品も掲載。著者ならではの視点で、春画鑑賞のポイントを指南してくれる。