たった1滴の唾液検査で膵臓がんの早期発見が可能になる
「がんの遺伝子やタンパク質の研究をやっていましたが、お金も手間もかかって実際、臨床現場には応用できませんでした。それで、簡単に採取できてコストもかからない体の代謝物質に目をつけたのです。慶応大の杉本昌弘先生と研究を始めたところ、唾液中からのものが最もきれいに解析でき、膵臓がんの診断に使える代謝物質が発見できたのです。偶然の発見で目からウロコでした」
唾液検査は、プラスチックのチューブ容器にストローを使って唾液を1滴(0.2~0.4㏄)垂らすだけ。それをマイナス80度で保管し、山形県鶴岡市にあるサリバテック社の研究所衛生検査所に送って解析をする。
「調べるのはポリアミン類という代謝物質で、がん細胞が増殖するときに必要となる物質です。膵臓がんでは『スペルミン』と『スペルミジン』という物質が重要な働きをしていて、3つの物質の濃度などを総合的に多変量解析します」
検査の結果は0~1の間の数値で表示され、健常者の平均値は0.17で、膵臓がん患者の平均値0.81に近いほどがんの疑いが強くなる。