米で報告が 盲腸とパーキンソン病の切っても切れない関係
盲腸を切除すればパーキンソン病を予防できる? 米国などの研究チームが欧米の2種類のパーキンソン病患者160万人以上のデータベースを分析したところ、盲腸手術を受けたことのある人は、そうでない人に比べてパーキンソン病の発症リスクが約19・3%も低いことがわかった。
さらに別のデータ分析では、パーキンソン病を発症した人のうち30年以上前に盲腸手術を受けていた人は、それ以外の人に比べて発症が約3・6年遅かったという。
パーキンソン病は、いまだ多くが原因不明の神経変性疾患で国の難病に指定されている。運動の仕組みを調節する働きがある「ドーパミン」が減るため、手足の震え、歩行困難、発語障害のほか、睡眠障害、うつ症状、認知機能障害、痛みなども表れる。
一見、盲腸とは何の関係もなさそうに思えるが、実はかねてから腸との深い関係が指摘されていた。消化器専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は言う。
「効果的な薬剤がまだなかった時代、胃潰瘍の患者さんには『迷走神経離断術』という手術が行われていました。脳と腸をつなぐ神経を切断して胃酸を減らすことで、症状を改善させる治療です。この手術を受けた人の経過を追ったところ、パーキンソン病にかかる人が有意に少ないことがわかりました。そこから、腸の中で作られるα―シヌクレインという異常物質が迷走神経を通じて悩に到達し、パーキンソン病の発症に関わっているのではないかと考えられているのです。また、パーキンソン病の患者さんでは初期の段階で大腸にα―シヌクレインができ、そのために高率に便秘になります。便秘はパーキンソン病の引き金になる可能性があります」