子供の頃に受けた抗がん剤治療の影響が心臓に表れるケースも
抗がん剤の副作用で心臓疾患を発症したり重症化するケースが増えていることを前回お話ししました。心臓に大きな負担をかける白金製剤(プラチナ製剤)や、心毒性があるアントラサイクリン系の抗がん剤の影響による場合が多く、抗がん剤の進歩で生存率が高くなった分、がんと心臓疾患の両方を抱える患者が増えているのです。
高齢になってがんにかかり、抗がん剤治療を始めたことで心臓疾患を発症するケースだけでなく、小児がんで子供の頃に抗がん剤治療を受けて治った後、青年期になって心臓に影響が表れる患者さんもいます。
たとえば、通常は3枚ある大動脈弁が先天的に2枚しかない二尖弁の患者さんが小児期に抗がん剤治療を受けていると、大動脈弁狭窄症が進んだ20代で弁を交換する手術が必要になる場合があります。もともと、二尖弁の人は片方の弁にかかる負担が大きくなって心臓弁膜症を発症しやすいのですが、より早めの処置が必要になる場合があるのです。大動脈弁の逆流がそれほどひどい状態ではなく、通常なら手術せずに経過を観察できるような段階でも、小児期に使った心毒性のある抗がん剤の影響で心機能が落ちている分、早期に治療を受けなければなりません。