「意思を尊重する」と言いながら既定路線は決まっている?
医者が肺がんの治療はもう無理な状態であることを説明した後、「あなたにとって最善の方法を考えましょう。あなたの意思を尊重しますよ」と言いました。続けて、看護師が「食べられなくなった時は胃ろうは作りません。人工呼吸器はつけません。なるべく苦しまないように希望する……それでよろしいですね」と、ゆっくり繰り返します。
兄は一つ一つにうなずき、それと一緒に医者と看護師もうなずいて、それを看護師が記録しています。
私は黙って聞いていましたが、その時、なんとなく違和感を持ったのです。医者は「あなたにとって最善の方法を考えましょう。あなたの意思を尊重する」と言いながら、既定路線は決まっている。看護師が「胃ろうを作らない。呼吸器もつけない」と確認し、兄が同意するのが当然といった感じでした。なんだか医者や看護師の思い通りに進めるための単なる儀式に思えたのです。
■「生きたい」と思ってもなかなかそうは言えない
医者や看護師の考え方が、きっと間違っていることではないのでしょう。ですから、私は反論することもありませんでした。後で分かったのですが、あれが「人生会議」ってやつだったと思うのです。でもあれじゃあ、本当の人生会議ではないですよね。