内臓に持病があっても…血圧の薬をやめると寿命が縮む?
血圧を下げる薬を降圧剤といいます。降圧剤には多くの種類がありますが、その中でも使用頻度が高いのが、ACE阻害剤とARBと呼ばれている薬です。
この2種類の降圧剤は、いずれもレニン・アンジオテンシン系という、体の水や塩分を保つ仕組みを抑える薬です。本来は必要な仕組みなのですが、高血圧の患者さんでは、この仕組みが強く働くことにより、血圧が上がり、心臓などの臓器にも負担がかかることが分かっているからです。
ACE阻害剤やARBは優れた効果を持つ薬ですが、腎臓を流れる血液を減らすような働きもあるため、腎臓機能が高度に低下したような状態では、それがより悪化する可能性を考えて、中止するか他の薬に変更することが多いのが実際でした。
それでは、腎機能の低下を理由に降圧剤を中止することで、体に悪い影響はないのでしょうか?
今年の米国医師会の内科専門誌に、それについての研究結果が報告されています。アメリカの大規模な住民データを解析したところ、腎機能が高度に低下したことを理由に、ACE阻害剤やARBを中止すると、中止しない場合と比べて、死亡するリスクも、心臓病などの病気になるリスクも、いずれも増加していたのです。一方で薬を中止しても、透析が必要となるような腎不全になるリスクには、ほとんど差はありませんでした。内臓に持病がある人が血圧の薬をやめる時には、より慎重に考えた方がよさそうです。