新型コロナは野菜スープで予防 ノーベル化学賞候補が指南
歴史的なピンチをどう乗り切るか。世界中で新型コロナウイルスの薬やワクチンの開発が進んでいる。完成まで見えない敵から、どうやって身を守るかが問題だが、ヒントは身近なところにあった。野菜だ。野菜の取り方を見直すことで、ウイルスや細菌から身を守る免疫力がグンとアップするという。
熊本大名誉教授で、バイオダイナミックス研究所理事長の前田浩氏がこう言う。
「さまざまなウイルス感染による重症化を防ぐカギは、活性酸素の働きをいかに抑えるかにかかっています。うまくいけば軽症で済む。もちろん、新型コロナウイルスにも当てはまります。その働きを担うのが、抗酸化物質です。野菜に多く含まれていて、実は生食より加熱して食べる方が効率よく摂取できます」
野菜の抗酸化物質は、トマトのリコペン、ホウレンソウやブロッコリーに含まれるルテイン、大豆のイソフラボン、タマネギのケルセチンなどがよく知られる。分類上は大きく5つのタイプがあり、総称してファイトケミカルと呼ばれる。生のサラダで食べる方がよさそうだが、加熱がベターとは意外だ。
「野菜の植物細胞を覆う細胞壁は、噛んだりミキサーで処理したりしてもほとんど壊れません。細胞壁が壊れなければ、食べてもそのまま排泄されるだけですが、加熱すると破裂して、中のファイトケミカルや食物繊維が出てきます。そのため、生食の抗酸化力を1とすると、加熱時は10~100倍。焼いても煮ても構いませんが、いつでも食べやすいので、野菜スープがおすすめです」
そう言う前田氏は東北大を卒業すると、ハーバード大がん研究所へ。研究を重ねて帰国すると、熊本大で副作用のない抗がん剤スマンクスを生み出す。その成果から、2016年にはノーベル化学賞候補に。ウイルス学の世界的権威が、新型コロナ予防に野菜スープをすすめるのだ。
ダニ掃除を徹底する
作り方は別掲の通り。10年以上、毎朝温め直してマグカップ7分目ほど飲んでいると、風邪などの感染症にはほとんどかからないという。アレンジ法などは、新刊「ウイルスにもガンにも野菜スープの力」(幻冬舎)に譲り、新型コロナ対策のヒントを聞いた。
「ダニのフンには、プロテアーゼというタンパク質分解酵素があります。マウスの鼻にこれを入れてインフルエンザウイルスに感染させると、ないときよりウイルス量は100倍になり、マウスは100%で死ぬ。それぞれ単体の感染は問題なくても、複合感染だと激烈な炎症反応サイトカインストームを起こすのです。新型コロナの重症化も、サイトカインストームの可能性が指摘されていますから、ダニ掃除をしておくのが無難です」
抗HIV薬は、プロテアーゼを阻害する。新型コロナ治療でもその効果が伝えられるだけに、やっておいて損はない。
■パセリ、ホウレンソウ、ブロッコリーを積極的に
肝臓などで合成されるグルタチオンは、強い抗酸化力から炎症や潰瘍の治療薬になっている。処方量は、1日100~300ミリグラムで、同じくらいの量を野菜で摂取できるという。
「グルタチオンの含有量はパセリ、ホウレンソウ、ブロッコリーに多い。米国人の場合、人によっては野菜から最大130ミリグラム摂取しています。このことからも、野菜スープを毎日続けることの有用性が分かるでしょう」
豚のレバーや牡蠣にも多いという。
■カレーには大根やニンジンの葉も
カレーに使われるターメリックは、強い抗酸化力で抗がん作用も期待される。うまくアレンジすれば、新型コロナ予防にもうってつけだ。
「緑色が濃い部分ほど抗酸化力が強く、キャベツや白菜なら白い部分より外側の緑の部分がベターです。そんな特徴から、カレーにはホウレンソウやツルムラサキ、からし菜、菜の花などの緑色野菜のほか、大根やニンジンの葉も加えるといい。これらの葉は、根より50~100倍も抗酸化力があるのです」
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特効薬もワクチンもない以上、自分の免疫に頼るほかない。だったら、世界的権威の知恵をきょうから取り入れよう。
前田家の作り方
(1)定番野菜は、タマネギやキャベツ、ニンジン、カボチャ、セロリやブロッコリー(茎も)、ホウレンソウや小松菜などから、その時々によってなるべく多くの種類を組み合わせるのがコツ。大根やニンジンの葉はクセがあっても、抗酸化力が強く、加えること。それぞれ適当な大きさに切る。
(2)①を2、3リットルの水で30分~1時間煮る。
(3)粗熱をとったら、ミキサーでポタージュ状にしてタッパーなどで冷蔵庫に保存しておく。基本的に味付けをしないが、飲むときに味噌や岩塩、出汁しょうゆを少し足してもよし。