「外科手術」と「カテーテル治療」にはこれだけの違いがある
虚血性心疾患は、動脈硬化が進んで起こるケースが大勢を占めています。冠動脈バイパス手術は、血液が動脈硬化で狭窄している血管を通らなくて済むように迂回路をつくるので、心臓はトラブルがある血管の血流に左右されることがなくなります。一方、カテーテル治療の場合、多くは石灰化で硬くなった血管や、動脈硬化で壁が崩れそうになって狭窄している血管を広げて血行を再建するので、心臓はトラブルがあった血管の血流に依存します。血流が改善されたままの状態であれば問題はありませんが、動脈硬化そのものを治しているわけではないので、再び同じところで同じトラブルが起こる可能性があるのです。
また、生涯でかかる医療費にも差が出てきます。冠動脈バイパス手術はいったん機能が回復すれば、その後はとくに薬を飲む必要はありません。しかしカテーテル治療は、血管内にステントを留置した箇所で血栓ができないようにするため、血液をサラサラにする抗血小板薬を複数、長期間にわたって飲み続けなければなりません。抗血小板薬は高額なため、その分だけ多く医療費がかかります。一時的な負担は手術より少なくても、生涯にわたる薬の費用、さらにはそれを義務的に飲み続けなければならないという精神的圧力がかさめば、むしろ負担は大きくなってしまうのです。