<13>コロナの感染力は高まるも毒性は変化せず 変異に注意
新型コロナウイルスの流行初期は、スパイクタンパク質の614番目はアスパラギン酸というアミノ酸であった。しかし、それがグリシンという別の種類のアミノ酸へと変化した変異ウイルスが、今年の1月下旬に中国とドイツのサンプルから発見されている。その変異を持ったウイルスはヨーロッパで爆発的に増加し、世界各地に広がった。実際、2020年5月の時点ではゲノム配列が解読されている新型コロナウイルスのおよそ7割はこのアミノ酸置換がある変異体ウイルスである。日本も例外ではなく、現在の報告されている新型コロナウイルスの配列はこの変異ウイルスが主である。
この変異した新型コロナウイルスは、オリジナルのものと比較して、細胞での増殖能力が向上し、患者由来の上気道(鼻・口・喉など)検体からのサンプルでもウイルス量が増加している傾向があったとの報告があった。別な研究グループも、この変異ウイルスは3~9倍ほど感染効率が上昇していると報告した。また、614番目のアミノ酸はS1サブユニットにあり、S2サブユニットとの相互作用に関与している。614番目のアミノ酸がグリシンに変化することにより、S1とS2の相互作用がより強固になるため、感染力を維持できるのだろうという報告もあった。ただし、いずれの研究グループも、このウイルスの変異が症状の悪化や、免疫からの逃避などに関連するようなデータは出ていないと報じている。