手術の延期は患者の安全と安心を守るために判断される
それでも、「まだ手術はしない」という選択をする患者さんもいらっしゃいます。そうした場合、もちろん患者さんの意思を尊重します。最終的に手術を受けるか受けないかは患者さんが決めることだからです。
手術を予定している患者さんに対し、私は必ず「たとえ予定日の前日でも、手術したくなくなったらいつでもやめていいんですよ」と伝えます。患者さんには、その直前まで手術を断る権利があるからです。そうした患者の権利を守ってくれる病院は「信頼できる施設」だと判断してもいいでしょう。
逆に、患者さんが「手術を考え直したい」と申し出たとき、難色を示して、客観的な説明をしないまま半ば脅すようにして手術に誘導する医師や病院は疑ってかかるべきです。何よりも優先すべき「患者さんを守る」という意識がなく、仮に何かトラブルが起こった際に突き放されてしまう可能性があります。
検討を重ねた手術の延期は、患者さんの安全と安心を最優先した治療の一環なのです。
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