なかなか良くならない拒食症に「集団家族だけ療法」
■数年前は命の危機があった患者が「普通」の生活に
こんな経験はないだろうか? 夫(妻)に自分の気持ちを理解してもらいたいだけなのに、全く耳を傾けてくれないばかりか正論をとうとうと述べられる。次第に「何を言っても無駄だ」とむなしくなり、場合によっては激しい感情や衝動が込み上げてくる。
「摂食障害の親子でも、同様のすれ違いが繰り返されている。親が大好きで繊細な子供ほど、親の顔色ばかりうかがうような言動を取ります。やがて“いい子”でいることに行き詰まり、その破綻が摂食障害や親を困らせる問題行動に走らせる。親に傾聴・共感を徹底して求めるのは、“どうせ理解してもらえない”という子供の、親への不信感を和らげ、親への信頼感を取り戻すのが目的です」
月1回の家族だけ療法では(コロナの影響で今はオンラインでの限定開催)、毎回親子の関わりが報告され、それに対して宗医師らが、「どのような言動が共感的か」といった助言・指導をする。
一朝一夕には結果が出ないが、数年前は命の危機を迎えていた拒食症の子が、今では大学生や社会人として「普通に」生活をしていたり、結婚し子供を育てていたりするエピソードは数え切れないほどある。
※拒食症は正確には「神経性やせ症」という病名だが、文中では分かりやすい拒食症を使用。