若手医師が目指して進む「新しい医療」はたくさんある
■いまの医療界は未来のビジョンを見せらていない
もちろん、現時点ではそういった若返りを可能にする処置や方法はありません。しかし、そんな発想を常に持っておくことが大切です。たくさんの人がそうした発想を持っていれば、いつか誰かが実現できるようになるのです。
たとえば、iPS細胞をシート状にして手術で心臓の表面に貼り、心筋を再生させる再生医療は、まったく新しいジャンルの治療法といえます。30年前にはとても考えられなかったような治療が、現実になりつつあります。たくさんの人たちの発想が現実になり、現実になったら次は確実性を高めていく。さらに、それが広く患者さんに使えるようになるまでの期間を短縮させる。これは次代を担う医師たちがやるべき仕事です。もしも動脈硬化を抑制する細胞が見つかれば、それを手術中に血管に植えることで動脈硬化を改善させる新たな治療が登場するかもしれません。
われわれの世代は、こうした未来の医療のビジョンをマンガやアニメ、小説の中で垣間見て、それを現実と照らし合わせ、「まだそこまでは進んでいないな」「これは実現したぞ」といった確認をしながら進んできました。しかし、いまはそうしたビジョンを若手医師やこれから医師を目指そうという人たちに具体的に見せられていないのが現状です。これは、医療界全体の責任といえるかもしれません。