このまま逝くかもしれない…山折哲雄さん肺炎を振り返る
でも調子に乗って仕事で全国を飛び回ったり、お酒もたくさん飲んでいたものですから、それらが重なって85歳のとき軽い脳卒中で倒れてもいるんです。
原因は持病の不整脈だったので、そのときの治療はカテーテルアブレーションという心臓の手術を受けました。脚の付け根から心臓にカテーテルを通し、心房にある患部を焼き切るという手術でした。全身麻酔を要するので「85歳はギリギリです」と言われました。一般的にはあまりやらない年齢のようでしたが、その手術の名医が「あなたは大丈夫。すぐに講演に行けますよ」と言うのでやってみたら大成功。5時間ほどの手術でしたが、翌々日には退院して、本当に1カ月もたたないうちに仙台に講演に行きました。
「医学ってのはすごいものだな」と思ったと同時に、長年患ってきた消化器系の病気と、心臓や肺といった循環器系の病気の違いを実感しました。消化器系は鈍痛、疼痛、激痛の連続で、「存在の重さ」をしたたかに感じさせられるものでしたが、循環器系では空気が薄くなるというのか、体が軽くなる瞬間がところどころにあって「このまま死ぬのも悪くないな」と、そんなことも考えました。