熱い情熱を持った指折りの放射線治療医が亡くなってしまった
ある時、私は冗談のように「あなたが母校である東大の教授に選ばれたら考えてもいいけれど、それ以外はみんな断ってね」と唐沢医師に言いました。すると彼はにっこりして、「分かりました!」と答えてくれました。とても深く印象に残っています。
唐沢医師の活躍は、放射線治療の最先端で多岐に及びました。膵臓がんや脊椎腫瘍に対して、手術の最中に直接照射する「術中照射治療」を行い、IMRT(強度変調放射線治療)を主とする高精度放射線治療装置「トモセラピー」では毎回、治療直前のCT画像を元に小さくなったがんの形に沿って照射範囲も小さくして、周りの副作用を減らす方法を実施。
さらに、第4世代の「サイバーナイフ」では、脳腫瘍や転移性脳腫瘍などに1ミリの誤差範囲内で放射線照射するピンポイント治療も行ってきました。これら最先端の装置を使い分け、熱い思いで多くのがん患者の治療にあたっていたのです。
いまは、唐沢医師が育てた後輩たちがレベルを下げることなく頑張ってくれていますが、あの人懐こい、がん征圧への熱い熱い思いを抱いた彼にはもう会えません。