新型コロナの影響で在宅医療の重要性が一層浮き彫りに…
コロナが怖いからと在宅医療に切り替えた患者さんがいました。その方は奥さまとの2人暮らし。アルツハイマー型認知症で、前立腺がん末期の80歳の男性です。コロナの影響で院内でのリハビリができなくなり、筋力などの機能低下(廃用)が進みトイレに行くのも困難に。奥さまが見かねて在宅医療への移行を決断しました。
在宅医療がスタートしたのは桜の咲く4月。それから4カ月後の8月には旅立たれていかれました。
自宅に戻られた当初は旺盛な食欲を示され、奥さまの用意したおにぎりやグラタン、好物の大福もちをおいしそうに食べていたとのこと。
九州男児で日頃は寡黙な患者さんがある日、珍しく私たちにお話しされたこともありました。
「来たよ、優しかった、優しい看護師さんばっかりだよ」
時にコンビニへ買い物に行くなど、残された季節を奥さまと一緒に過ごされました。
そんな奥さまが旦那さまを看取った後におっしゃった言葉が思い出されます。
「4月に退院したときはコロナがこんなになるとは思わなかった。最後の時間を一緒に過ごせてよかったです。病院だともしかしたら面会に行けなかったかも……。ありがとうございました」
どんな状況でも患者さんの思いを大切にくみ取るのが、在宅医療の役割なのです。