著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

瀬戸内寂聴さんが生前に断言していた がん患者のリハビリの大切さ

公開日: 更新日:

 作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんが99年の生涯を終え、続報が相次いでいます。その中に気になる記事がありました。月刊「文藝春秋」が2015年3月号に掲載したインタビュー記事で、92歳で胆のうがんを患ったときのいきさつがつづられています。

 胆のうがんは、脊椎の圧迫骨折で入院していたときの検査で発覚。骨折の治療に続いて、がんも腹腔鏡下手術で摘出したそうです。麻酔で遠のく意識を「ああ、これが無か」と思い、「これが無なら、死とはなんて甘美なものだろう」と表現したのは寂聴さんならではでしょう。

 無の境地の最中で切除された胆のうを目にして、また一言。その鮮やかさに「焼いて食べたら美味しそう」と語ったそうです。

 私が伝えたいのは、波瀾万丈の人生から導かれた言葉ではなく、その先です。手術前の自宅療養から数えて4カ月ほど寝たきりで、術後1週間で退院したときは体重が8キロ減り、一人では歩くこともできなかったそうです。ベッドで1分間も座っていられず、食事も横になったままだったといいます。

 このように筋力や身体機能が低下している状態は、サルコペニアと呼ばれ、寝たきりや術後は要注意。高齢者はなおさらです。そこにがんが重なると、二重苦、三重苦になります。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…