西本真司
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西本真司西本クリニック院長

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

クローン病で小腸切除 経鼻栄養が痛くて体が受け付けない

公開日: 更新日:

「経鼻栄養がつらくてつらくてたまらない。何とかしてください」

 50代の主婦のDさんが私のクリニックに来られたのは12年前のことです。Dさんは、小腸と大腸に炎症が起こる難病「クローン病」を発症して20年が経過したところでした。小腸の切除手術後、鼻からチューブを挿入して栄養を取る経鼻栄養をされていたのですが、「あまりにも痛くて体が受けつけない。夜間も眠れず精神的に参っていると訴えられました。

 私は断食と星状神経節ブロックをお勧めしました。腸が炎症を起こしているとき、栄養を入れると交感神経を刺激し逆効果になりがちです。ですから短期間、断食をし、併せて星状神経節ブロックで視床下部の血流を増やして痛みを緩和。交感神経の過緊張を一時的にブロックするのです。この療法でどこまで改善するのかDさんには不安があったようです。無理もありません、それまで20年間、クローン病で苦しまれたわけですから。

 しかし、初回の神経節ブロックで症状は少し和らぎました。Dさんにとって一筋の光を見た思いだったそうです。

 その後も1週間から10日に1回のペースで星状神経節ブロック治療を受け続けました。さらに、気功法、ヨガ、腸の負担を軽減させるための断食、糖質制限、そして腸内環境を整えてくれる発酵食を中心とした食事を提案しました。星状神経節ブロックで徐々に痛みが和らいだDさんは精神的にも前向きになり、食事療法も積極的に取り入れてくれるようになりました。2年ほどでDさんは再燃の気配がなさそうなところまで回復。以後10年近く、自律神経と免疫のバランスを見る簡単な検査だけで、ほぼなんでも食べられています。

 そしてDさん、なんと今では発酵食教室の先生に。腸内環境のためにお勧めした発酵食品が、Dさんにとって自分のキャリアを開くことにつながったのです。

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