性感染症編(7)フレイルとの関係 ドスンと座るようになったら要注意
一般的な基準は、①意図しない年間4.5キロまたは5%以上の減少②何をするのも面倒だと週に3~4日以上感じる③歩行速度の低下④握力の低下⑤身体活動量の低下、のうち3項目以上当てはまる場合をフレイル、1~2項目をプレフレイルと呼ぶ。
「フレイルになると、病気にかかりやすくなったりストレスに弱くなって死亡率の上昇や身体能力が低下します。その原因はさまざまですが、中核となるのが加齢による筋肉量減少と筋力低下です。これを『サルコペニア』と呼び、歩く、立ち上がるなどの日常生活の動作に影響が出て、介護が必要になったり転倒しやすくなったりします」
日本では65歳以上の15%程度がサルコペニアといわれている。筋力は40歳ごろから徐々に低下して70歳以降はそれを自覚するようになる。「手足が細くなった」「椅子から立ち上がりにくい」「椅子にドスンと座る」などはその影響とされる。HIV感染者はそれが早く起きるというのだ。
なぜ、HIV感染でフレイルになるのか?
「HIV感染症という慢性疾患により、細胞レベルが老化して慢性炎症が起きます。その結果、中枢神経系や自律神経系、免疫系、代謝系などの生理機能が低下し、それをカバーするための代償機構も働きにくい体内環境が作られます。こうした環境がサルコペニアや栄養状態の低下などを招き、筋力低下、体重減少、疲労感などのフレイル症状を起こすのではないか、と考えられています。慢性炎症を起こす疾患はHIV感染症だけではありません。長期間、人の体をむしばむ性感染症を含む感染症や、糖尿病などの生活習慣病などもフレイル発症の可能性があるのではないか、と考えられるのです」
早期にフレイル症状を自覚したとすれば、慢性疾患を含めて一度かかりつけ医に相談するのもいいかもしれない。