寝たきりになりたくない! 押さえておきたい5つの「M」
山田医師の患者でこんなケースがあった。
その人はがんで、体力があるため強い抗がん剤で治療をすればがん細胞が一度は消える「寛解」を目指せる可能性があるが、根治は難しい状況だった。
「提案できる治療の選択肢は、強い抗がん剤の投与、比較的軽い抗がん剤の投与、抗がん剤を投与しない、の3つでした」
強い抗がん剤は寛解は目指せるものの、副作用のリスクが高く入院が望ましい。
比較的軽い抗がん剤は副作用が少なく通院で受けられるが、効果がマイルドで残された時間が短くなるかもしれない。抗がん剤治療をしないという選択肢にすれば、生きられる時間はさらに短くなるかもしれない一方で、通院の頻度をさらに減らせ、抗がん剤の副作用を心配する必要もなくなる。
「『5つのM』のうち『生きがい』において、この患者さんは『仕事』ときっぱり答えました。最期の瞬間まで仕事をやり通したい、ただし受けられる治療があるなら治療も受けたい、と。奥さまもそれに同意されていました。私は抗がん剤の詳細なデータを示し、患者さんに適しているのは比較的軽い抗がん剤による治療ではないかと伝えました。最終的に患者さんが選択したのは、私が推奨した比較的軽い抗がん剤の治療でした」