小切開手術での死亡事故は経験不足の医師による不手際が重なった
空気塞栓を予防するには、鉗子で血管をしっかりクリップしておくだけでいいのですが、度重なる不手際のために手術時間が長くなって、それも不十分になってしまったのでしょう。
結局、心筋保護に加え処置にも手間取ったことで、心臓を止めている時間は5時間に及び、手術時間は11時間もかかっています。通常であれば、心臓を止めている時間は約2時間、手術は4時間程度で終わるので、それだけ患者さんの負担が増大して心筋梗塞につながったと思われます。
MICSでそうしたトラブルが起こってしまったとき、医療安全における最も基本的な対処の方法は、心筋がそこまで損傷を受けない段階、心臓がまだ元気なうちに通常の開胸手術に切り替えて処置を行うことです。それが今回の事例では、MICS=小切開にこだわりすぎたように感じられます。医師の経験不足と医療安全を軽んじていた姿勢に問題があるといえるでしょう。また、この領域に対して経験不足である論文著者が、批判的な結論を導いていることにも疑問を感じます。
MICSを希望する患者さんが身を守るためには、知識と経験が不足している医師による手術を回避しなければなりません。次回、詳しくお話しします。