「枕外来」の整形外科院長に聞く どんな枕なら熟睡できますか?
眠れないから「うつ病」になる
──年齢によって「いい枕」は変わってくるのでしょうか?
「加齢と共に背中が曲がりますし(円背)、肥満や筋力低下など体形も変わってきます。適切な条件を満たした枕を使うことが重要で、〈高さが体格に合っていること〉〈適度な硬さがあること〉〈凸凹がなく平らであること〉が推奨されます」
──枕を新調する際は何を考慮するべきですか?
「当研究所では、10~15分ほど長く仮眠を取っていただきます。その際、筋肉の緊張を見させていただきます。枕は5ミリ刻みで高さ調節できますが、実は“自分に合う枕”というのは、頭で考えなくても体が答えを出しているもの。寝ても疲れが取れないのはその証拠で、枕やお布団からメッセージが届くのです。判断するポイントはいくつかあり、①朝起きた時に枕が頭からずれている②朝起きた時に手を上げていたり、手を敷いて寝ていた③朝起きた瞬間から首が痛い、肩が凝っている④しっかり寝たのに熟睡感がない、といった具合です」
──ストレスやうつ病などでも熟睡できなくなりますか?
「いえ、私は反対だと考えています。うつ病だから熟睡できないのではなく、熟睡できないから精神の疾患にかかってしまいやすくなるのです。『うまく眠れない』という症状を訴えれば、すぐに医師から睡眠薬が処方されますが、その前にまず、熟睡できる環境を整えましょうということ。その意味で枕と布団は重要なインフラなのです」
首の後ろには太い脊髄神経と細かい頚神経が散らばっている。椎間板ヘルニアなどの疾患が再発したりするのは、起きている時の姿勢ばかりでなく、寝ている時の姿勢にも原因があるという。体のメンテナンスに、いかに睡眠が重要なのかがわかる。
▽山田朱織(やまだ・しゅおり) 16号整形外科院長、山田朱織枕研究所代表。東京女子医科大学卒。同大学病院整形外科教室、付属第2病院(現・足立医療センター)、亀田総合病院、成瀬整形外科勤務を経て現職。全国の整形外科医との共同研究ネットワーク「睡眠姿勢研究会」を立ち上げ活動中。