著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

注射はイヤ…でもどうしてもやらなければいけないケースがある

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 クスリには飲み薬=内服以外にも、湿布、吸入、座薬などの外用薬、そして「注射薬」があります。注射薬は投与の際にどうしても針を刺さなければならないので、どちらかというと「イヤだ」という方が多いと思います。とりわけ高齢者は血管が細くなっていることがあるため、採血や注射薬を投与される際に針がうまく血管に刺さらず、何度もやり直されて痛い思いをしてしまった方もいらっしゃるでしょう。

 それでも、注射薬はとても重要です。まず、注射でしか投与できないクスリがあります。たとえば、以前紹介した「インスリン」はタンパク質の一種なので、口から服用すると消化されてしまい効果が得られません。

 また、クスリを口から服用するとその成分が体内に吸収されるのですが、いきなり全身の血管に入っていくわけではなく、まず門脈という血管を通って肝臓に入り、その後で全身の血管に広がっていきます。全身の血管に広がることを「分布」といい、クスリが効果を発揮するのはこの段階になります。ところが、クスリの多くは分布する前に通ることになる肝臓で代謝(分解)を受けます。ここでの代謝の割合が大きいと、当然、効果が少なくなってしまいます。少し専門的な言葉になりますが、クスリが分布する前に代謝されることを「初回通過効果」といい、クスリの中にはこれを逆手にとって初回通過効果で代謝を受けて初めて効果を発揮する構造になるように工夫されているものもあります。注射薬は直接静脈に投与されるため、当然ですが初回通過効果を受けることがありません。つまり、投与したものがそのまま効果を発揮するということになります。

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