精神疾患は技術の発達で原因遺伝子や病態の解明が劇的に進む
そうしたことから患者側は症状の重さを自覚できなかったり、医師に症状を偽ったりし、医師側も満足いく治療ができない部分もあるという。
■AIの進歩で大量のスクリーニングが可能に
「しかし、AI(人工知能)が発達すれば一度に大量のスクリーニングができるため、省力が可能になる。精神疾患は今以上に診断される人が増える一方で、治る人も増えるのではないか、と予想しています」
たとえばAIを用いた対話型の自動応答ソフト「ChatGPT」はその有力候補になるかもしれない、と奥氏は言う。すでに技術的には実用レベルまで達していて、もうすぐ患者自身がChatGPTの医療版に悩みを打ち明け、診察を受けるきっかけになりそうだ。
「声にはその時の感情や健康状態が現れることが知られています。その声をバイオマーカーにして、精神疾患の診断に役立てようとする試みが行われています。声帯は副交感神経である反回神経の支配を受けていて、ストレスを感じると交感神経が優位になり、声帯が緊張して周波数が高くなります。こうした声の状態を分析することで、心の状態を分析しようというわけです。世界で開発競争になっていて中国では音声人工知能を手がける企業と北京大学の研究チームが音声を使ったうつ病スクリーニングの臨床研究を進めています」