認知症患者の施設での金銭トラブルを防ぐために貴重品の管理はどうすべきか
認知症の方に現金を渡す際は、万が一紛失しても損失が少ないような金額にするといいでしょう。可能であれば施設側に保管をお願いしてください。実際、私が勤める病院の関連施設では看護師が保管しています。記憶の維持が可能な軽度認知障害の方の場合、置いた場所を思い出せるので自室にある金庫に鍵をかけて自己管理ができますが、認知症が進行していると、その鍵を置いた場所を忘れてしまうので自己管理は難しくなります。
施設によっては、入居者さんの貴重品を保管してくれるほか、お金の使い道を記録して家族に提出してくれるところもあります。認知症の方が盗まれたと不安になっても、出納の記録を自分の目で確認すると安心できます。これから入居を検討していて貴重品の管理が心配であれば、事前に施設へ保管方法を確認しておくといいでしょう。
▽久保田有一(くぼた・ゆういち) 1998年山形大学医学部医学科卒業後、2001年国立精神・神経センター武蔵病院、03年東京女子医科大学脳神経センター、09年アメリカ・クリーブランドクリニック、10年フランス・ティモン病院、11年朝霞台中央総合病院、19年TMGあさか医療センター副院長を経て、現在は東京女子医科大学付属足立医療センター脳神経外科で教授を務める。著書に「増補改訂版 知っておきたい『てんかんの発作』」。