認知症の本人が「食べたい」と何度も訴えたら食事を与えてもいいのか
認知症の症状のひとつに、食行動の異常があります。特にアルツハイマー型認知症に多いのが「過食」です。認知機能の低下で記憶障害が起こり、食事した行為そのものを忘れて何度も食べるとされています。
また、認知症で満腹中枢の働きが低下するのも過食を引き起こす原因です。ご飯を食べると血中の糖質や脂肪、インスリンが増加して脳下垂体にある満腹中枢が刺激されます。これにより、満腹を感じて摂食中枢が抑制されるので、食べる手を止めるようになります。しかし、認知症の方は脳の萎縮により満腹中枢が正常に働かなくなるといわれているので、食べてもお腹が膨れた感覚を得られず、食べ続けてしまうのです。
認知症の本人が、ご飯を食べたばかりなのに「食事を与えてもらえない」と怒り出すと、家族はイライラしてしまうでしょう。ですが、怒るのは禁物です。認知症が進行しても、その時に感じた感情は残るので、食事を要求した際に家族から「怒られた」という記憶は覚えています。その結果、本人は怒られるのを恐れて、家族が寝ている間に冷蔵庫や棚を漁り食べつくしてしまう「盗食」も引き起こします。