聴力は問題ないのに会話の内容がわからない…それは「APD」の可能性
APDと診断される場合、まずは純音・語音聴力検査で異常がないことが前提になる。大阪公立大学付属病院ではほかにも問診票(チェックリスト)、聴覚情報処理検査(APT)のほか、発達面や心理面の検査も行い、診断を下すという。
「検査量が多く時間と労力がかかるので、すべての耳鼻科で行うのは難しい。現状、診断できる病院が限られている問題があります」
実際、今年7月に耳鼻科医を対象に行った意識調査では、APDの診察経験があると回答した67%のうち、確定診断を下せたと回答したのは12%にとどまったという。
一般的な耳鼻科でも取り入れやすいAPD診断の手引を作成することを目的にして、阪本氏らは2021年から国の支援を受けながらAMED研究に取り組んでいる。
「今回の研究で、年齢が高くなるにつれ『聞こえにくさで人とのコミュニケーションがつらい』と回答した人の割合が高いと分かりました。学生時代は“天然な子”で済まされていても、社会ではそうはいかない。職場に適応できず、うつを引き起こすケースも少なくないので、早期に診断を受け対策する必要があります」