聴力は問題ないのに会話の内容がわからない…それは「APD」の可能性
聞こえているのに聞き取れない──。近年、注目されているのが「聴覚情報処理障害/聞き取り困難症(APD/LiD)」だ。聴力検査では異常はないのに聞き取りにくさを感じ、日常生活に支障をきたす。APDの研究に力を入れ「マンガでわかるAPD 聴覚情報処理障害」の著者でもある大阪公立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学の阪本浩一氏に詳しく聞いた。
APDとは、通常の聴力検査では問題はないものの、騒がしい場所、電話越しといった相手の口元が見えない状況、会議など複数人が同時に話す場面など、特定の環境下で聞き取りにくさが生じる病態をいう。普段から聞き返しや聞き間違えが多かったり、長い話の内容を理解しにくいのが特徴だ。
「学生の場合、先生が話している内容が聞き取れず授業についていけない、友人たちとの会話についていけないことで自覚します。学生時代には悩んでいなかった人が就職を機に上司の指示を聞き取れず、『なんで聞いていないのか』と指摘され初めて自覚するケースも少なくない。ただし、静かな場所での1対1の会話は問題なく行えるので周囲の理解を得にくく、“気にしすぎ”と片づけられやすい」