高齢者の歯科治療では「基礎疾患」の把握が重要なポイント
また、ずっと部分入れ歯だった60代後半の男性患者がインプラントを希望して来院した際も、血糖値が問題になった。口腔内を診断したところ、歯周病の進行具合が一般的なパターンと異なっていたことから「高血糖が原因で悪化しているのかもしれない」と疑い、治療を開始する前に病院で検査を受けてもらった。すると、HbA1cが9.5%であることがわかった。
7.0%未満にならなければインプラント治療はできないと伝えると、その患者は糖尿病の治療を受けながら生活習慣の改善に取り組んだ。
1年半後、数値は6.8%まで改善し、インプラントを実施できた。さらに、血糖値だけでなく全身の健康状態も良好になり、「高血糖を見つけてくれたおかげ」と喜ばれたという。
■高血糖は治療リスクがアップする
「糖尿病の患者さんは感染症にかかりやすい状態になります。高血糖により白血球の一種である好中球の機能が低下し、ウイルスや細菌を排除する働きが悪化するうえ、毛細血管の血流が悪化して酸素や栄養を体の隅々まで届けられなくなり、細胞の働きが低下するためです。出血を伴う外科的な治療を実施したときに口腔内の常在菌が血管内に侵入すると、菌血症などさまざまな感染症を起こすリスクがあります。ですから、歯科治療を受ける前に血糖値をしっかり確認しておくことが重要なのです」