親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10原則~②③
ましてや沈黙に焦れて、「あなたは本音ではどんな気持ちで何を考えているの?」と親から“直球”を突きつけるのも望ましくありません。さんざん傷ついてきたお子さんは、もうこれ以上1ミリも傷つきたくないと警戒して自分の殻に閉じこもっているのに、どうしてそんな危険な橋を渡るような真似ができるでしょうか? 「何もわかっていない親だ」と、さらに固く心を閉ざしかねないのです。
どうしても沈黙に耐えられない親御さんの場合、じつは本当の問題はひきこもりのお子さん以上に、先の見えない状態や不確実な場面で生じてくる強い不安や心配をコントロールできない、ご自身のマインド(専門的には「不確実性への耐性」が低いと表現される)の問題が大きいと自覚し、お子さんをどうこう言う前に自らの“こころ”の有り様を振り返ってみてもよいかもしれません。(つづく)
▽最上悠(もがみ・ゆう) 精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。