新井平伊
著者のコラム一覧
新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

サバ缶は健康にいい? 脳の活性化や血管の若返りなどと言われるが…

公開日: 更新日:

ブームに乗っかるならそのまま継続を

 EPAやDHAは健康にいいとされるオメガ3系不飽和脂肪酸という栄養素で、サバに限らず、イワシ、サケ、マグロといった脂肪が多い魚に含まれています。

 EPA、DHAは血中の中性脂肪を下げる効果があることから脂質異常症の治療薬として使用されており、またオメガ3系不飽和脂肪酸が心筋梗塞や狭心症などの予防に有益との研究結果も発表されています。

 08年発表の日本の大規模臨床試験「JELIS試験」では、脂質異常症治療薬のスタチンを服用している患者さんへ、高純度のEPA製剤を追加投与したグループは、そうでないグループに対して、虚血性心疾患の発症リスクが53%減少するとの結果が示されています。

 ただ、健康のためにEPA、DHAを積極的に取ったらいいかとなると、別問題。その理由は、前回の本欄で述べたことと通じます。ブームとは関係なしにEPAやDHAが多い魚を日常的に食べている人は、もともと健康意識が強く意欲的で、積極的に体にいいことを取り入れている人でしょう。サバ缶を食べるだけではダメなんです。EPAやDHAに中性脂肪を下げる効果があっても、運動もせず、高脂肪食品を好きなように食べていれば、中性脂肪が下がるどころか、上がります。そもそも薬で摂取できるほどの量を、食品で取るのは不可能です。

 サバ缶48缶を娘(連載担当者)から受け取った大阪のご両親。「子供たちには頼れないから」と、サバ缶はブームで終わらせず、あれから6年経った今も、毎日無塩で水煮のサバ缶を食べているそうです。缶詰は塩分強めですから、無塩というのもポイントです。

 そんなご両親がほかに毎日食べているものは、雑穀入りご飯、手作りの減塩味噌、納豆、豆腐、すりおろしたタマネギ、ちりめんじゃこ、手作りのシソジュース、豆乳、煮干し、カツオ節、畑で育てた旬の野菜。

 料理の味付けはごくごく薄く、野菜多めで、野菜は通常は捨てる部分(根っこなど)も細かく刻んだりして活用。ご飯は少なめ。朝昼晩とほぼ決まった時間に食事を取る。お酒は、常温の発泡酒1缶を時々夫婦で分けて飲む程度。

 甘いものが好きで、牛乳たっぷりのコーヒーと和菓子をおやつに食べるのが習慣。ただ、2人そろって朝6時起床、朝食前にラジオ体操を一緒にし、午後にプールか山歩きに出かけ、夕方には2人でウオーキングという活動的な生活だからか、肥満とは無縁とのこと。

 79歳と76歳のご両親、そろって持病なし、服用している薬なし、だそうです。そして、健康食品やサプリメントの類いは一度も使った経験なし。

最新の健康記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  2. 2
    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

  3. 3
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 4
    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

  5. 5
    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

  1. 6
    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

  4. 9
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 10
    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見

    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見