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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

オンライン健脳カフェへの質問…ノンアルコールビールなら大丈夫?

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②クーラーを使わずに高温の部屋での生活は脳への問題あり?

 クーラーを使わずに高温の部屋での生活は、認知症に問題ないでしょうか--。これも、オンライン健脳カフェに寄せられた質問です。

 昨今の夏の気温は、もはや「暑い」ではなく「熱い」。私たちの世代は、体温を超える気温では育っていません。昔は30度を超えると大騒ぎをしていましたが、いまや夏の30度は珍しくありません。

 また特に東京のような住宅が密集している地域では、室外機の影響で外気温が高くなり、実際の気温以上に灼熱地獄になっています。若くて健康でも脱水症を容易に起こしてしまうのですから、体内のもともとの水分量が少ない高齢者ならなおさらです。

 脱水症や熱中症は、脳血流の減少と異常な高体温から、脳神経に大きなダメージを与えます。屋内での熱中症が多数報告されています。脳を含む体のために、昼夜を問わずクーラーを利用してください。7月30日付の本欄でも紹介した通り、こまめな水分補給も重要です。カフェイン入りドリンクは利尿作用がありますので、ノンカフェインのドリンクで水分補給を。

「そんなに暑くないのでクーラーは不要です」と言う高齢者がいるのですが、高齢になると温度のセンサーが若い人に比べて鈍化しています。感覚的な「暑い・暑くない」に頼りすぎないようにしてくださいね。なお、やはり高齢者の方がよく口にする「クーラーのつけ過ぎは体に良くない」ですが、「熱い」夏にはむしろ「クーラーをかけないと体に良くない」です。体温より高い気温の中で生きていくのは未体験ゾーンと認識しましょう。

 クーラーの設定温度についても触れたいと思います。外から帰ってきた時は、23度でも24度でも低く設定するのはいいのですが、いったん部屋の温度が下がり、落ち着いたら、27度や28度くらいに設定し直しましょう。特に高齢者では、これくらいの温度の方が過ごしやすいと思います。

 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の藤平杏子氏らが高齢者の夏における冷たい/温かい食事・飲み物の摂取頻度と栄養状態、食欲、エネルギー摂取量との関連を検討した研究結果を最近発表しました。それによると、夏に温かい食事や飲み物の摂取頻度が比較的高い高齢者は栄養状態が良好で、食欲が旺盛、一方で冷たい飲み物を摂取するとエネルギー摂取量が減少するとのこと。部屋はクーラーで涼しく、食事では冷たいものを控えめに、で夏を乗り切りましょう。

◆質問受け付け オンライン健脳カフェでは、認知症に関する質問を随時受け付けています。回答は、毎週金曜日11時半~12時の「質問会」で紹介します。

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