中高年の無理な脂質カットは体を悪くする…メタボ悪玉論で“ヤリ玉”に挙がる脂肪の正しい知識
コレステロール不足で血管劣化しうつ状態に
前述の調査では、低栄養状態の人は、コレステロール値が低いことも浮き彫りになった。その影響も大きいという。
「脂質のひとつLDLコレステロールの役割はいくつかあって、ひとつはあらゆる細胞の膜の材料になることです。つまり、しなやかな血管を保つには適度なコレステロールが欠かせません。昭和26年から55年まで死因のトップだった脳卒中は、がんに取って代わられ、減少傾向。その要因のひとつには、肉をはじめとする積極的なタンパク質の摂取で血管が強化されたこともあると考えられています。もちろん、過剰なLDLコレステロールは酸化して動脈硬化を起こすのは事実ですが、低栄養状態の方は、コレステロールの適切な役割を果たすことができず、血管をモロくしている可能性があるのです」
さらに、コレステロールは男性ホルモンなどのホルモンの材料になり、ビタミンA、D、E、Kなど脂溶性ビタミンが吸収されることをサポートする働きも担う。これらの点でも、脂肪を控え、コレステロールを抑えることは、かえって体のダメージになるという。
「男性ホルモンは性機能だけでなく、前向きなやる気の維持に関わっていることも分かっていますから、LDLコレステロールが不足している方は精神面でも意欲が湧かずにふさぎ込みやすい。健康になろうとベジタリアンのような食生活に切り替えた方が、うつ状態になったら、食事の変化が影響している恐れもあるのです。さらに、脂溶性ビタミンは、脂質がないと吸収されにくいので、ビタミン吸収においても、ベジタリアンは逆効果なのです」
女性アスリートがスピード力を高めて競技成績を上げようとすると、体脂肪率の適正上限の30%を大きく下回る10%台半ばくらいにまで下げることがある。それで生理が止まって無月経状態が続くのは行き過ぎた脂質制限で、ホルモンバランスを崩した影響だという。
では、一般の人は、どれくらいの体脂肪率を目指せばいいか。
「男性は15~20%、女性は25~30%くらいがちょうどいい。もしBMIが25を超えて肥満を指摘されたら、筋トレや軽い有酸素運動などを増やして、体脂肪率を適正ラインに落とせば体重そのものを無理に落とさなくて済むケースもあります。要は、ラガーマンみたいな引き締まった小太りを理想にするのです」
過度な食事制限は、必要以上にスリムを求める若い女性によく見られるイメージだが、男性も人ごとではない。肉や魚は控え過ぎないほうがいいのだ。