別れた娘への見栄のために、なぜ俺が? 妻の「もっと稼げ」アピに鼻白む40歳男性【冷酷と激情のあいだ~男性編~】
40歳、貧乏に不満はない
「冷酷と激情のあいだvol.218〜女性編〜」では、再婚相手である夫・ヒデキさん(40歳・仮名)との結婚生活に経済的な不満を抱く妻・奈緒さん(44歳・仮名)の心情をお届けしました。
夫婦ともにバリキャリではなく、同世代と比べても質素な生活だと話す奈緒さんは、離れて暮らす娘にも情けない気持ちを抱いています。夫のヒデキさんは現状をどう捉えているのでしょうか。
【冷酷と激情のあいだ~男性編~】
「うちねー、貧乏なんですよね。ガチで貧乏だと思います。
毎月、家賃を払うのもいっぱいいっぱいだし、スーパーマーケットでも、買いたいものを諦める日が結構ありますからね。外食なんてほぼないですね」
あっけらかんとした口調で、こう話すヒデキさん。そして、今の生活に対して経済的な不満はないと言います。
シャインマスカットを食べたかったけれど
「贅沢したいとかないんで、俺。普通に家があって食べるものがあれば、それで十分なんですよ。
まぁ食べたいものを買えないのは、ちょっとキツいときもありますけどね。
この前なんて、うまそうなシャインマスカットがあったんですけど、値段を見てびっくり。とてもじゃないけれど買えませんでした。まあ、しょうがないですね。
最近は物価が上がっているから、前よりも食べたいものを諦めることが多くなってるかな〜」
ここまで話したあと、ヒデキさんは急に強い口調になってこう続けます。
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妻の劣等感はわかるけど
「でもね俺、今の生活が気に入っているんですよ! だから奈緒が不満を持っていたとしても、生活を変える気なんて、これっぽっちもありません。
バリバリ働くのは俺の性分には合わないし、貧乏でも普通に暮らせていれば、それで満足なんですよ!
奈緒はバツイチで、前の旦那さんのところに娘がいるんですけど、彼らは結構いい暮らしをしているっぽいですね。
だから奈緒が娘の生活と自分を比べて、惨めな気持ちになっているんだろうな〜っていうのは想像できます。
でも、だからといって俺らも裕福になるために頑張ろうぜ! というのは、別の話ですよね。だって他人の家庭だし」
奈緒さんが娘に抱いている劣等感を「理解はしている」と強調するヒデキさん。
しかし奈緒さんがよその家庭と自分の家を比べて落ち込む姿に、同情よりも不快感が湧いてきます。
今の生活に満足なのに
「被害者ヅラって感じ? ですかね?
嘆いたって仕方ないのに、奈緒は夢見過ぎなんですよ。それで勝手に落ち込んでいるように見えるから、イラっとするんです。
俺らは似たもの同士。20代からロクに仕事もしてこなかったからキャリアもない。今さら頑張ったってタカが知れているでしょ。
だから俺は今の生活に満足なんです。な〜んの不満もありません。
奈緒が娘に対して恥ずかしいって思うなら、もう娘と会わないようにすればいいだけじゃないですか? 娘だってもう中学生になるし、あっちには新しいママだっているんだから。
もう割り切って、あちらの家庭に子育ては任せればいいんですよ。
自分で育てていないくせに娘には“ちゃんとした母親”に見られたいんでしょう。とんだ見栄っ張りですよね。そんなくだらない欲があるから落ち込むんじゃないですかね?
少なくとも俺は、奈緒の見栄のために、仕事を増やす気はありません」
◇ ◇ ◇
恋人同士であれ、夫婦であれ100%同じ価値観を有する男女は稀です。ましてや交際前の男女となれば、なおのことです。少しのすれ違いが、大きな溝に発展することも少なくないのが異性間における現実でしょう。
まさにこれこそが、男女関係における醍醐味にもなれば致命傷にもなる“冷酷と激情”のはざまなのかもしれません。
(並木まき/ライター・エディター)