社員の半分が「外国人」という会社の働きやすさ 日本人だけの会社は取り残される?
海外出身の社員の方が飲み会に積極的
さて、本題に移って社員の約半分が外国人というソフツーの働き方はどうなっているのか?
社長の鍾勝雄さん(45)は中国の農村部で育ち、大学入学までパソコンにすら触ったことがなかったという。そんな鍾さんも中国でエンジニアとしてのキャリアを積んだ後に来日し、派遣エンジニアとして働いていた元外国人労働者だ。
ある社員が社長の人柄をこう話す。
「とにかく聞き上手。部下の『コレやりたい、アレやりたい』に反対したことはないのではないでしょうか」
現在、同社の社員数は39人。うち17人が海外出身者で、8つの国と地域の社員が在籍している。
「つい最近、日本橋から築地のオフィスに引っ越してきたばかり。周辺やすぐ近くの銀座にはさまざまな国の料理店があって、宗教的な理由などで食べられないといったケースはほぼありません。驚いたことは、海外出身の社員の方が社員同士の会食など“飲みにケーション”に積極的だということ。むしろ日本人の社員が尻込みするところを『そんなことを言わずに行こうよ』と誘われます」(湯澤さん)
■「日本の安全と清潔が好き」とバングラデシュ人社員
オフィスでの会話は日本語。海外出身社員も流暢な日本語を話し、ついつい母国語が出るのは急いでいるときなど。日本語は主に現地の日本語教室や日本語学校に通って身に付けた人が多いようだ。「皆さん、母国では超一流の大学を出ていますので独学で日本語を覚えたという人もいますよ」(日本人社員)という。
働いている人の生の声を聞いてみよう。ベトナム・ホーチミン出身で来日歴17年、在籍6年目の女性社員(35)がこう言う。
「ホテル電話機の営業を担当しています。話せる言語は、日本語、ベトナム語、中国語(北京語)、広東語、そして英語です。ソフツーはとにかく残業が少なく、一般の中小企業にはない福利厚生が整っています」
バングラデシュ出身で来日歴5年、在籍1年の男性社員(35)もこう語る。
「日本の好きなところは非常に安全で清潔、また礼儀正しいです。公共機関の優れたサービスにも魅力を感じています。仕事はソフトウエア・アプリケーション開発、ウェブシステムの構築など。話せる言語は、日本語、英語、ベンガル語です」
■円安でのインフレ手当を月1万円支給
女性社員も少し触れているが、健康保険や年金などの各種社会保険は日本企業と同様に完備。住宅手当の月3万円(会社から3キロ圏内)のほか、そのための引っ越し費用も15万円まで補助してくれる。社内の服装は自由で、年間休日は125日前後。もちろん、産前産後休暇や育児休暇もあり、すでに取得している人もいる。
とはいえ、日本は今、急激な円安の真っただ中。外国人労働者にとって日本で働くメリットは低くなっているのではないか?
「業界の中で年収ナンバーワンを目指して年々給与は増えています。円安に伴い、インフレ手当として月1万円も支給されています」(湯澤さん)
■国内で働く外国人労働者は約182万人
優秀な人材に国籍は関係ない。2022年10月現在、国内で働く外国人労働者は182万2725人(特別永住者や外交官などを除く)。16年10月に約108万人で100万人の大台を超えてから、コロナ禍でも減ることはなく、22年は前年より9万5504人も増えている。
資格別では、よくニュースになる「技能実習」の約34.3万人より、ソフツーで働く人のような「専門的・技術的分野」が約48万人で圧倒的に多い。
また、国籍別ではベトナムが最も多く46万2384人、次いで中国の38万5848人。一方、前年比で急激に増えている国はインドネシアの47.5%増(2万5079人)、さらにミャンマーの37.7%増(1万2997人)だ。
もっとも、日本企業の給与は他国と比較して特段高いわけではなく、アジアからの出稼ぎ労働者の多くは、より給与の高い中東諸国やドイツ、オーストラリアで働く傾向にある。それでも日本に来る理由は、給与面プラス日本文化や自然の魅力、治安の良さを理由に挙げている人が多い。
「現在、外国人を雇用している事業所数は29万8790カ所。日本で就職活動をしている外国人留学生の約9割が日本語能力試験(JLPT)で幅広い場面で自然な会話ができる『N2』以上の日本語能力があるといいます。ただし、留学生はコロナ前の2019年の約31.2万から、昨年は23.1万人にまで減っています」(ジャーナリスト・中森勇人氏)
すべての留学生が日本企業への就職を希望するわけではないが、優秀な外国人を採用したい企業は待遇も含めた改善が必要のようだ。