プロ野球選手、十人十色の怒り方
広島の監督だったマーティ・ブラウンがよくベースを外してぶん投げて退場になったが、ベースを壊したわけではない。チームを鼓舞する狙いのパフォーマンスでファンも面白がった。監督の退場が選手のやる気に火をつけて試合に勝ったことさえある。やるときは大げさに、しかし物を壊さない程度に。
日ハムの斎藤佑樹がノックアウトを食らった歯がゆさで「壁ドン」ならぬベンチの壁を拳固で叩いて悔しがったが、痛いのは嫌だったようで「いやん、もう」程度にコツンだった。ハンカチ王子の名残か、怒りの表出としては内向きだ。「いやん、もう」じゃ周りもフフンと笑うのみ。
自分への怒りが爆発したダイエー時代の杉内。打たれて交代させられて怒り収まらずに硬いベンチをボコボコに殴りつけ、両手の小指付け根骨折、全治3カ月。球団から罰金600万円、謹慎10日の処分を食らった。自暴自棄の揚げ句、投手にとって生命線の指を骨折じゃ同情されぬ。
節度、我慢、寛容がスポーツ選手の品格を決める。昔、あと一人で勝利という九回2アウトで巨人の長嶋茂雄にヒットを打たれて、悔しくて吠え、マウンドの土を蹴り飛ばした星野仙一に、一塁ベース上の長嶋が大声で、「仙! 辛抱せい! 辛抱だ!」と諭した。怒りを理解してやり、自制を促す、さすがではないか。