全勝対決で土の稀勢の里 白鵬と「大一番の経験」で及ばず
横綱の壁は高かった。
13日目に対戦した横綱白鵬(31)と大関稀勢の里(29)。両者が対戦した時点で、全勝はこの2人のみ。次点は鶴竜、日馬富士、遠藤の3敗だったから、事実上の優勝決定戦といっても過言ではなかった。
日本人横綱を待望する観客の声援は稀勢の里に集まったが、しかし、歓声は悲鳴に変わった。軍配は白鵬。稀勢の里も果敢に攻めたものの、土俵際で下手投げを食らって転がされた。
相撲評論家の中澤潔氏は「見ていて、非常に面白い相撲でした」と、こう続ける。
「稀勢の里は体も締まっており、今場所は自分の相撲に自信を持っていた。なぜ、この相撲がもっと早くできなかったのか、不思議だったくらいです。しかし、白鵬が一枚上手だった。動きの素早さが違いましたね。白鵬は終始、自分から手を休めずに攻めて、稀勢の里に腰を据えて相撲を取る暇を与えなかった。稀勢の里も寄り立てましたが、ここだ! という決定的なチャンスはありませんでした」
先場所あたりから確かに、稀勢の里は変わった。平幕相手の取りこぼしがなくなり、常に泰然自若。取組直前も、今までのように落ち着かない様子で、パチパチまばたきすることもない。取組前の支度部屋でも険しい顔を崩さなかったのが、最近は穏やかな表情を浮かべるようになった。