競歩選手がコース変更直訴 東京五輪で死者出ると識者危惧

公開日: 更新日:

 もっともな「お願い」ではないか。

 9月の世界陸上(ドーハ)に出場する競歩代表で、20キロの世界記録保持者の鈴木雄介(31)が8日、北海道千歳市の合宿で、東京五輪のコース変更を求めた。

 理由はこうだ。

 7月31日の早朝に東京五輪のコースを歩いたところ、「全く日陰がない。脱水になってもおかしくない」という厳しい環境を実感したという。

 当初、競歩の五輪コースは国立競技場を発着点に青山通りに周回コースを設定するはずだったが、審判を配置するには不向きなことから皇居前を周回(20キロは1周1キロ、50キロは1周2キロ)するコースに変更された。

 陸連強化委員長や専務理事などを歴任した澤木啓祐氏(順大大学院特任教授)は以前、日刊ゲンダイのインタビューで「東京五輪のマラソンや競歩は北海道や(山梨県の)河口湖付近でやるべきだ」と言った。五輪開幕まで1年を切ったいま、連日の酷暑と鈴木の発言を受けて改めて話を聞くとこう言った。

「鈴木はよく声をあげた。湿度が高い日本のこの時季、28度以上での屋外競技は死に至る環境といわれている。1995年8月の福岡ユニバーシアード大会のマラソンは気温29度、湿度90%、無風という条件で行われ、完走率は男子55%、女子70%。この結果、次のユニバーシアード大会から、ハーフマラソンに種目変更された。東京五輪の競歩やマラソンはその時より過酷な条件になる。死人が出るというのは、決して大袈裟な話ではない」

 さらに澤木氏は続ける。

「今回の競歩のコースは、過去のデータ(気温、湿度など)をしっかり調べて決定したのかどうか。日陰のない皇居前を4時間も歩けば、たとえゴールしても後遺症が心配です。体温が下がらず、脳に悪影響を及ぼすこともある。北海道は無理でも、選手の体を第一に考え、コースは(都内の)日陰のある日本橋のビルの谷間にするなど再考するべきです」

 現在、東京の朝6時の気温は30度を超えている。総務省消防庁の発表によれば、7月29日から8月4日の1週間に熱中症で救急搬送された人は全国で1万8347人(死者57人)に上り、東京はダントツの1857人。8月1日から6日までに東京23区では、40代から90代までの男女39人が熱中症で死亡したという報道もあった。消防庁はこの猛暑で警戒を呼びかけている。ある競歩関係者は「五輪でメダルを狙う鈴木が実際にコースを歩いて語った言葉ですから重みがある。こんな環境では観客も来ないのではないか」と懸念している。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    演技とイケオジぶりで再ブレーク草彅剛と「10億円マンション売却説」中居正広氏との“絆”

  2. 2

    元ソフトバンク「伊奈ゴジラ」の転落人生…淡路島で盗み84件総額472万円、通算5度目の逮捕

  3. 3

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  4. 4

    米田哲也が万引きで逮捕!殿堂入りレジェンド350勝投手の悲しい近況…《苦しい生活を送っていたのは確か》

  5. 5

    テレ朝に“ナスD”超え「1億円横領」続々の過去…やりたい放題で解雇された社員のヤバい所業

  1. 6

    東洋大姫路・岡田監督が吐露「本当は履正社に再任用で残る予定で、母校に戻るつもりは…」

  2. 7

    かんぽ生命×第一生命HD 人生設計に大切な保険を扱う大手2社を比較

  3. 8

    山下智久「正直不動産」映画化でひと儲け狙うNHKに「甘い」の声も…山P人気は下降気味

  4. 9

    レイズ看板選手「未成年への性的虐待容疑」で逮捕も…ドミニカは殺人も銃撃も「無罪放免」の実態

  5. 10

    キムタク一家の妹Kōki,は映画主演の裏で…フルート奏者の姉Cocomiの話題作りと現在