体操・梶谷信之氏「1回は出たい」と這い上がりメダル獲得
真っ先にメダルを見せたかったのは、一番上の兄だったという。
「8歳上なんですが、実家の家業を継ぐため、大学へは行かせてもらえずに体操を断念していました。そして、私の中学生までのコーチでもあります。私が宮崎から大阪の清風高校に進学する時も不安よりも解放感が勝ったほど、兄の練習は厳しいものだった。そんな思いに報いることができたことが、最大の喜びでした」
■森末は病室で筋トレに励み…
東京五輪が1年延期となったことについては「今は練習場所がなくて苦しい状況ですが、自宅でウエートトレーニングに取り組むのもいいかもしれません」とこう続けた。
「(ロサンゼルス五輪で金、銀、銅メダルを獲得した)森末慎二君は筋トレが好きじゃなかったんですが、日体大の時に両アキレス腱を切って入院。ケガの功名じゃありませんが、退院した時には二の腕が太くなっていてパワーアップしていました。長期入院している間、足は使えませんから、病室で徹底的に上半身を鍛えたそうです。筋トレは家でも可能です。モスクワをボイコットした時は、とても4年後のロサンゼルスなんて考えられなかった。目先の目標を見つけ、それをクリアしていくことで、何とか気持ちをつなぎました。1年の延期は長いでしょうが、今できることを見つけて頑張ってもらいたいと思います」
▽かじたに・のぶゆき 1955年5月3日、宮崎県西都市出身。清風高から日体大を経て紀陽銀行へ。80年モスクワ五輪体操代表選手。84年ロサンゼルス五輪体操男子平行棒で銀メダル、同男子団体で銅メダルを獲得。現在は岡山大学大学院教育学研究科教授。