元球団幹部に聞く 720億円損失の実態と年俸削減の重大事案
「プロ野球はかつてない危機的ともいえる状況。球団にとって非常に大きな問題で、減収のインパクトは大きい」
12日に行われたプロ野球の臨時オーナー会議。議長のDeNA・南場智子オーナー(58)は会議後の記者会見でこう言って危機感を募らせた。
コロナ禍によりプロ野球は延期に次ぐ延期を強いられ、公式戦の試合数は143試合から大きく減る見通し。最短で6月19日に開幕することができても、試合数は120。少なくとも1球団23試合分の売り上げが吹き飛ぶことになる。
関大名誉教授の宮本勝浩氏(理論経済学)は先日、「新型コロナウイルスによりプロスポーツ業界が失う経済効果」を発表。日本のプロスポーツ業界と関連業界が失う経済効果を約2747億円と試算した。競技別の経済的損失はプロ野球が最も大きく、仮に年間試合数が100を下回り、一定期間は無観客などの制限付きで開催した場合、経済的損失は約720億円になると推計した。
■収入の6割は入場料
関係者によると、1球団の1試合当たりの収入は1億~2億円。年間売り上げは100億~300億円程度と12球団で幅があるが、純利益は多いところでも10億円強。どう転んでも赤字は避けられそうにない。
1996~2007年まで阪神で球団社長などを歴任した野崎勝義氏はこう言う。
「球団経営は非常に苦しい状況に追い込まれているはずです。収入の大きな柱は入場料。私が経営に関わっていた当時、一軍と二軍のチケット代と甲子園のシーズンシートを含めた収入は全体の約6割を占めていた。試合数が減り、無観客試合が一定期間続くと、1試合ごとの入場料収入がなくなるだけでなく、すでに購入者の支払いが済んでいるシーズンシートの取り扱いも問題になるでしょう」
あるセ球団では入場料収入のうち、シーズンシートが占める割合が約4割という。ある球団の年間シート購入者は、「球団から、今年の購入分をそのまま使用するか、来季開催分に振り替えるか、どちらかを選べるという連絡がきたが、未開催分の払い戻しなどの具体的な話はまだない」と言う。
テレビやラジオの放送収入やスポンサー収入にもその影響は及ぶ。某球団の営業担当が明かす。
「ローカル放送局の地上波の放映権料は、1試合当たり1000万円程度。無観客開催によって減額もありうる。球団スポンサーや球場看板の広告に関しては、そもそもコロナ禍による試合数減を想定していない。外野フェンスの広告料は球場ごとに違うが、年間3000万円程度。来季の契約更新時に割引をするなど、配慮が必要なケースも出てくるだろう」