白井貴子さん モントリオール金から30年、難民支援を継続
五輪メンバーでNPO法人を立ち上げ難民の支援活動を
白井は今、バレーボールの普及や難民支援の活動を行っている。
「50代の頃は7年間、杉並区の外部指導員として小学校や中学校のバレー部を指導していました。06年にはモントリオール五輪金メダルのメンバーを中心に『NPOバレーボール・モントリオール会』を立ち上げました。モントリオールから30年。みんな子育ても終わり、社会のために何かやろうとなったのです。最初、NPOなんて聞いてもピンときませんでしたね。07年にモンゴル会(モントリオール・ゴールドメダリストの会)を代表して、金坂(克子)と矢野(広美)とネパールのダマクの難民キャンプにシューズやシャツ、ボールやネットなどの物資を持参してバレーを教えに行きました。段ボール箱で約300キロ分。船便は日数がかかるし、送料がバカ高いので飛行機に載せました。荷物は1人20キロまで持ち込むことができたので、早大ボランティアセンターの学生さん5人で100キロ。私たちやテレビ朝日のスタッフなど12人が10キロずつ減らして120キロ。合計220キロを段ボール箱の持ち込み分に回しました。テレビ朝日のクルーのカメラ機材など約100キロは、渡航目的を聞いた航空会社が目をつむってくれました。
現地で一番感動したのは、難民の子供たちに、将来何になりたいの? って聞いたとき。『困った人たちを助けたい。そういう仕事をしたい』と。将来へ希望が持てないほど困っていると思っていたら、福祉に関する仕事がしたいという。心を打たれました。国内では毎年、横浜(神奈川県立横浜国際高校)でアジアスポーツフェスタを開催しています。日本に定住している難民のみなさんや留学生などを対象に一緒にバレーをやったり、サッカーやテニスのプロ選手が来て指導してくれることもあります。イベントがあると金メダルを持ってきてくださいとよく言われます。人が取った金メダルなんて見てもおもしろくないでしょ。そう思っていたんです。でも、みんな見たいと言うから、今はこっちから『金メダル持っていきますよ』って、押し売りみたいに言ってます(笑い)」
▼しらい・たかこ 1952年7月生まれ、岡山県岡山市出身。中2でバレーボールを始め、68年片山女子高(現・倉敷翠松高)中退、倉紡倉敷入社、72年ミュンヘン五輪銀、現役引退、73年現役復帰し日立入社、74年世界選手権金、76年モントリオール五輪金、現役引退、77年現役復帰、ワールドカップ金、78年現役引退。2000年日本女子バレーで初の殿堂入り。身長180センチ。現在、NPO法人バレーボール・モントリオール会理事、ミズノバレーボールアドバイザリースタッフ。